アニメ監督の出崎統さんが他界

お昼過ぎにTwitterを見ていたら訃報がTLに出ていまして。その時点ではまだ話が回り始めたばかりだったようですが、それから間もなくして本格的に訃報が流れ始めました。

出崎監督の名前は古くから見かけますし、お幾つだったのかと思ったら、まだ67歳じゃないですか。まだまだお若いのに。死因は肺癌と聞き、正直、「また(肺)癌か……」と思いました。多いですよね、50〜60代で癌で亡くなるアニメ業界の方って……。

出崎監督というと、『あしたのジョー』『ガンバの冒険』『エースをねらえ!』『ベルサイユのばら』などが有名ですね。いわゆる一般人向けの懐かしアニメ番組なんかの常連作品ばかりです。他方で、劇場版の『AIR』や『CLANNAD』なども手掛けていらしたようで。AIRCLANNADのようなここ数年の作品についてはよく知らないのですが、それ以前については、出崎作品は基本的に濃い味付けのされたアニメだったと思います。私の中では出崎監督と故・長浜忠夫監督が、濃い作風のアニメ監督の双璧かな。お二人とも、お芝居がかった、良い意味で大仰な演出をする監督さんだったと思います。この二人がともに関わったことのある作品が実はベルばらなのですが(12話までが長浜監督、それ以降が出崎監督)、出崎演出を長浜演出と比べて「詩的で繊細」と評するのが妥当だとは、僕は思わないです。まあ、長浜監督の方が台詞回しがオーバーだとは思いますが。他方で、出崎監督のサン=ジュスト像はどうかと思う。

そんな出崎監督の代表作として一本を選ぶとしたら、私ならば上に名前を挙げた作品群ではなく、『おにいさまへ…』を選びます。同作はベルばらと同じく池田理代子の漫画が原作で、内容的にはダウナーな『マリア様がみてる』のようなものですが、このアニメが濃い。本当に濃い。もう、どうしてこうなった?というくらいに原作とはかけ離れた濃さをしています。

そこで、神回の一つである第27話「マリ子刃傷事件」の一部動画を紹介してみます。



絵コンテを切っているのは出崎監督ご自身です。三咲さん役の勝生真沙子が頑張りすぎていて怖いんですけどw、この刃傷事件自体は原作にもあります。が、切りつける前も、後も、こんな泥沼を這いずり回るような描写は原作にはありません。出崎監督による解釈がもはや解釈の域を超えています。

ちなみに、このアニメはちょうど20年前にNHK(BS2)で放映されました。NHK暴走 狂気 英断は凄いと思います。NHKがアニメに本気になると誰もついて行けませんw


私は今でも少なくはない数のアニメを見ています。今のアニメが昔に比べて絶対的に劣る、などと言うつもりは全くありませんし、そう思っているわけでもありません(母数の関係上そう感じることがないわけではありませんが、良質の物同士を比べた時にそれほど差があるとは思いません)。ただ、出崎監督まで亡くなってしまった今、胸焼けするくらいに濃い作風のアニメが作られる機会というのがまた減っていくのだろうなという点についてはいささか寂しく思います。

出崎統監督のご逝去に、謹んでお悔やみ申し上げます。